フェーズ①:Grundrenovierung(基礎的なリノベーション)
小山:現状の共有スペースはまさに「夜」と「遊び」に特化した作りになっています。遊びやくつろぎといった要素は残しつつ、学習やミーティングなどの用途で昼でも使いやすい空間を目指しています。Before & Afterを並べていくと、こんな感じです。
― おぉ、すごい!Beforeは完全にパーティールームですね…昼に行きたくなる空間ではなさそう。これに対し、Afterは開放的で清潔感がありますね。
小山:リノベーション後は個別の学習スペースなども設けて、一人で過ごせるような仕掛けもあります。もちろん、大きいソファや机は談笑したり、ミーティングに使ったりというようなことをイメージしています。
フェーズ②:Möbelbau(家具作り)
― リノベーションとはいえ、家具も自分たちで作ってしまうんですね…!驚きです。これには何か理由があるのでしょうか?
小山: 学生寮はやはりお金がないので、低コストでできるデザインというのは条件として常にあったんです。でも、予算がないからといってボロくて質の低いリノベーションは嫌だなって。ベルリンらしさを活かしつつ、完成形も申し分ない家具作りができないかなと考えていたところ、パレットを使った家具を思いつきました。
廃材をリユースして家具へ(小山さんプレゼンテーション資料より)
― あ!これ、フォークリフトで「うぃーん」ってするやつですよね?ホームセンターとかスーパーにある…なぜこれに目を付けられたんですか?
小山:そうです!これをパレットと言います。ベルリンを歩いてて、何か良いものないかなーと探してたときにふとこれが目に入って(笑)。材木には「製材(加工用に美しく整えられたもの)」と「廃材(使用し終えたものや、製材を作り出すときに出てしまった余り)」があって、これは廃材の部類に入るかと思いますが、廃材って実は全然悪くないんですよ。形が悪いだけで、品質は製材とほとんど変わらない。これから家具をつくるシステムが生み出せたらと思い、今回のプロジェクトに取り入れることにしました。
― なるほど…。廃材からも美しいアートができるという感じですね。
小山:リユースで何か物を作ろうとすると、どうしても見た目がゴミというところから抜け出せない印象があるんです。僕はそこを変えたくて。もちろん新品のものは気持ちがいいですし、芸術性が高いものも素晴らしいと思いますが、僕は「機能すること=美」だと思うんです。
― 素晴らしい!「機能する美しさ」を追及していくことが、今回のリノベーションプロジェクトの重要なテーマなんですね。
小山:はい、今回のプロジェクトはそれを実験するチャンスですし、ここからいろいろと広げていけたらと思っています。現在は、どんな素材の廃材からでも家具などを作れるソフトウェアを開発しているんです。このソフトを使えば、誰でも何か作れちゃう!みたいな。今回はパレットでしたけど、他にも使われない素材に命を吹き込んで何かを生み出す仕組みを一般化していきたい。そういった “試すサイクル”みたいなものを生み出したいんです。写真右下にあるイスはその試作で、Mauerparkの蚤の市で販売してみようかとも思ってます。
パレットからつくる家具のイメージ(小山さんプレゼンテーション資料より)
今後のビジョン・目標
― 小山さんの今後のビジョンとして、これからもベルリンでプロジェクトを起こしていくようなイメージでしょうか?
小山:学生寮リノベーションプロジェクトはもちろんありますが、場所に関しては特に大きなこだわりはなく、どこでもいいと思っています。いま僕が取り組んでいるのはスタンダリゼーション。ここで生まれたスタンダードをいろいろな場所で応用したり、同じマインドを持つ人たちと共鳴したりしていけたらいいですね。例えば、廃材のリユースに関しては、東日本大震災後に生まれた神泉のリノベーションプロジェクトなどは今回のプロジェクトの参考になりました。災害からの復興と低コストな学生寮のリノベーションには共通する突破口というか、アイデアがあるように感じます。そう考えると、ベルリンと日本でつながる部分はたくさんありますね。
― 今後のますますのご活躍をこれからも期待しています!次回私がベルリンに足を運んだ際は、このリノベーションの完成を覗きに行かせて下さい!もしリノベーションが終わっていなかったらお手伝いしますよ(笑)。
この度は、記念すべき第1回目の「ベルリナー虎の巻」にご協力いただき、ありがとうございました!
小山:ぜひお待ちしています。日本でもお会いしましょう~ こちらこそありがとうございました。
【インタビュー概要】
聞き手:和田 桃乃(株式会社Windgate/ウィンドゲート ・ インターン生)
2