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【シンポジウム聴講】オルタナティブ・カルチャー存続のために@ゲーテ・インスティテュート

ドイツ政府の外郭団体であるGoethe Institut(ゲーテ・インスティテュート)にて行われたシンポジウムを聴講した。

【概要】
オルタナティブ・カルチャー存続のために ― 抵抗・自由・開放運動のアーカイブ
日時:2018年5月27日(日)
15:30~17:00
場所:ゲーテ・インスティトゥート 図書館
(東京都港区赤坂7-5-56 ドイツ文化会館2F)

抵抗運動、自由・解放運動、オルタナティブ運動は、その国の社会を持続可能な形へと形成する。次の世代のためにも社会の反対運動の歴史を今後の現代史の研究へ繋げるために、当時のパンフレットや写真、ニュースレター、デジタル典拠などは必要不可欠な資料である。しかしながら、抵抗運動の一次資料は公的なアーカイブへ収集されることはほとんどなく、その保存を保証されている状況にない。市民の”下から(草の根)”の記憶を繋いでいくには、市民社会が積極的に関わっていく必要がある。

今回ドイツと日本から、市民の社会参加を促すオピニオンリーダーとアーカイヴの代表を迎え、知識を共有財産として継承するにあたっての市民社会が果たす役割を議論する。本シンポジウムは、市民運動に関わる活動家やテーマに関心のある方々を対象とする。
(講演会イベントページより抜粋)

抵抗運動、自由・解放運動、オルタナティブ運動といった活動においては、当然ながらその活動の目的の達成のために多くの労力が使われる。その一方で、その活動の様子を「記録する」「記憶する」という部分にはなかなか手がまわらず、貴重な資料や記録などがその価値を評価されない状態が続いている。本シンポジウムでは、日独における市民運動やアーカイブのスペシャリストたちがその最前線を解説し、これからの市民社会におけるアーカイブのあり方について議論するというものであった。


日独における「アーカイブ事情」の違い

ドイツの市民社会では、約90‐100の自由なアーカイブがあるそうだ。市民活動を支える財源は補助金や寄付・販売活動によって確保されているが、そのほとんどがアーカイブに利用されないというのが現状である。そのなかでも、ベルリンはドイツのなかでも市民運動アーカイブの豊かな蓄積がなされている街だという。
たとえば、PAPIERTIGER(Paper tigerの意)という団体は、1981年より左派思想の紙媒体の資料のみを保存している組織だ。

Papiertiger HPトップ画面

Spinnbodenは、レズビアンに関するヨーロッパ最大のアーカイブである。図書館とオンライン上のアーカイブの2つを運営している。

ドイツでは、このようなアーカイブが市民社会の重要な一部であり、”生きた民主主義の機関”としての位置づけがなされている。国民の約3人にひとりがボランティアの活動に従事しているというデータもあるほど、日々の生活に市民活動が根付いている。これに付随してアーカイブも自由な発展を遂げているのだが、当然ながらいくつかの課題も存在する。

まず、安定的に専門性を維持していくことの難しさがある。アーカイブは経済性に大きく左右されるため、豊かとは言えない経済状況の市民活動においてアーカイブは不安定なものでありがちだ。また、アーカイブのデジタル化にも大きな労力が必要である。例えば、ドイツの女性に関するアーカイブを管理しているDDF(Digitales Deutsches Frauenarchiv)では、古い資料を1枚1枚手作業でPDF化している状況だ。アーカイブとして後世”使われやすい”ものを残していくためのデジタル化は、まず人の手が必要なのである。

では、日本ではどうだろう。

日本でもやはり、アーカイブに割くヒト・カネ・ハコ(場所)が圧倒的に足りていないのが現状だ。特に「ヒト」に関しては、アーカイブに携わる人々はもちろんのこと、「アーカイブを望む」人々の存在が重要である。市民と政治との距離が遠く、ドイツよりもボトムアップの風潮が弱い日本では、前者とともに後者もいかにして育てていくかが課題となる。

また、所蔵すべき資料を持っている本人達がその価値に気づいていない、というケースも多々ある。アーカイブを残すということは、その資料単体を残すだけでなく、当時のネットワークを残すことにもつながる。アーカイブに携わる側、アーカイブを望む側それぞれからの後押しによってアーカイブの価値を高める事も必要である。

市民活動に注目してみると、日本は言語の問題でその活動があまり認知されていないことが多い。世界的な市民活動のネットワークのなかで、そこが空白地帯のようになっているそうだ。この空白を埋めるためにもアーカイブはその機能をじゅうぶんに果たすだろう。


何のためのアーカイブか

アーカイブは「永遠に忘れないために」存在するものだ、と多くの人が思っているであろう。しかしながら、アーカイブは「”安心して”忘れるため」のひとつの手段でもある。正しい知識・正しい方法を駆使しアーカイブとして記録しておくことで、思い出しやすさや回顧のしやすさを創造する。その結果、アーカイブの当事者だけでなく、より外側の人々にも記録や記憶が受け継がれていくのだ。また、アーカイブの意義は“多数の真実”を残せる点にもある。アーカイブは必ずしも一つの真実や正解のみに結びつくのではなく、理念の達成や目的の実現のために動いたネットワークそのものを豊かに保存しているのだ。

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