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【インタビュー:ベルリナー虎の巻】vol.1 小山拓也さん

「ベルリナー虎の巻」、記念すべき第1回にフォーカスするのは…

ベルリンで暮らす人々がいかにして「ベルリナー」になっていったのか、その生き様にフォーカスする「ベルリン虎の巻」!

第1回目にインタビューさせていただくのは、ベルリン芸術大学(UdK)ニューメディア修士に在籍される小山拓也さんです。現在ベルリンの学生寮リノベーションプロジェクトをはじめ、ベルリンの社会に切り込む斬新な取り組みを続ける小山さん。そんな彼が現在のスタイルを確立するまでには、どのようなアイデアがあったのか、そして、ベルリンという街は彼の目にどのようにして写っているのでしょうか?

Profile

小山 拓也さん | Takuya Koyama

ベルリン芸術大学(UdK)ビジュアルコミュニケーション学科ニューメディアコース修士課程 / 東洋大学工業技術研究所客員研究員

埼玉県さいたま市出身。東洋大学人間環境デザイン学科プロダクトデザインコース在学中に、デザイン・リサーチグループ「disegrare」を創設するなど精力的に活動。卒業後に来独、2015年よりベルリン芸術大学ビジュアルコミュニケーション学科ニューメディアコース修士課程。学業の傍ら、フリーランスとしてベルリン国際映画祭関連トロフィーのデザインに携わる。現在はベルリン学生寮リノベーションプロジェクトを手がける。2018年より東洋大学工業技術研究所客員研究員としても活動。趣味はほぼ毎月バックパッカー旅行に出かけること。


ベルリンとの出会い

― 小山さんがベルリンへ、そして現在の場所(ベルリン芸術大学)に出会い、選んだきっかけは何ですか?

小山拓也さん(以下略):自身の専門分野の勉強と英語の勉強を兼ねて、TEDを毎日見ていたんです。そこで見かけた興味のある博士研究員が、当時ベルリン芸術大学のデザイン・リサーチ研究所(Dlab)で働いていたんです。その人にコンタクトを取り、当大学のコースを紹介してもらったことがきっかけですね。興味のある研究が行われていただけで、特にベルリン芸大自体が目的ではなかったです。

― なるほど。最近はベルリンのオンリーワン的なカルチャーや制度を求めてベルリンに移ってくる人が多いなか、小山さんのようなケースは意外ですね(笑)。そんな出会いから始まったベルリンでの暮らしや、街の印象はいかがですか?

小山:いまベルリン在住3年目になります。国際色豊かで、異文化の人々にとってかなり住みやすいですね。アジア人だろうが、中東出身者だろうが受け入れられる雰囲気がかなりあります。どんな興味関心に対しても(知識へのアクセスや人とつながるための)たくさんのイベントがあって、しかもそれを日本の都市部での生活と変わらない物価や、陽気なカフェや公園といった魅力を享受しながら楽しめるのがいいですね。

ネガティブな部分を言うとするならば、冬が寒いこと。そして、役所や病院などの対応が遅く、なんでも予約が必要でいちいち面倒なことですかね。

― 役所の手続き云々は、ベルリン移住者たちの間でもう鉄板のエピソードになっていますね。

小山:ルーチン化できることはしてほしいですよね…。ベルリンにいると、日本のシステムややり方が特殊なのかなぁと思ったりもします。

― 良い面・悪い面どちらも含めて、ベルリンという街は小山さん自身に合っていると感じますか?

小山:僕に合う合わないというよりは、ベルリンは誰に対しても合う街なんじゃないかなぁ。すごくニュートラルな感じがあって、スポンジみたいな街だと思っています。


専門知識をベルリンへ!ベルリン寮学生寮リノベーションプロジェクト

― ベルリン芸術大学(UdK)ではどのようなことを学ばれているのですか?

小山:プロダクトデザイン・インターラクションデザイン・メディアアートを専門としています。僕の在籍するニューメディアコースは、新しいIT技術(AI, UR etc…)の利用可能性の拡大に取り組んでいるところです。最新技術にどのような使い方があるか、アートという媒体を通して考える、という感じですね。

― おぉ…まさに最先端の研究なんですね!

小山:日本の大学ではまずデザインし、作り出すことが中心だったんですが、現在はそのプロダクトやデザインを生み出す理論と言いますか、コンセプトの部分に重点を置いてやっています。

― その流れの中で、現在取り組まれている「ベルリン学生寮リノベーションプロジェクト」があるのですね。このプロジェクトはどういう経緯で立ち上がり、小山さんが手がけることになったのでしょうか?

小山:学生寮管理団体に依頼されたことがきっかけです。学生の交流を促し、地域に開けた場を創造するための学生寮の共有スペースをつくるというのが依頼内容でした。現在は日独にいる僕の友人を巻き込みながらチームで対応しています。

学生寮リノベーションプロジェクト:世界各地にいるメンバーとのSkype Meetingの様子

― 仲間を巻き込んでプロジェクトを進めていらっしゃるのですね…!すばらしい!
  そういえば、StudierendenWERKの学生寮はベルリンのあちこちにありますよね。リノベーションしているのはどの寮なのでしょうか?

小山: Wohnheim Danckelmannstraßeというところです!いまはこの寮だけなのですが、上手くいけばこの寮でのリノベーション成功例を活かして他の寮にも広げられると考えています。”学生寮”ながらこういった建物のリノベーションに学生が関わるのは初めてのことらしく、何か面白いことができるんじゃないかとワクワクしています。

― それはきっと学生寮(StudierendenWERK BERLIN)側も期待度が高いでしょうね!実際にプロジェクトの中身をご紹介いただくことはできますか…?

小山:先日リノベーションプロジェクトの概要をプレゼンテーションした際のスライドがありますよ!その中からいくつかお見せしますね。
まず最初に僕たちが行ったのは、現在の共有スペースの利用実態調査です。その結果を以下のグラフにまとめました。

学生寮共有スペースの利用実態調査結果(小山さんプレゼンテーション資料より)

小山:茶色が現在の利用状況、灰色が現在利用されていなく、今後利用拡大が狙える部分です。共有スペースといえど、使われているのは夜間がほとんどで、用途もパーティーやちょっとしたレクレーションといった程度。学生寮らしい「学習」「グループのミーティング」といった用途には利用されておらず、日中はほとんど機能していないことが分かりました。

― たしかに、日中にほとんど使われていないのは勿体ないですね…。学習やミーティングに向いた空間というのは、例えるならいま日本でも急増しているコワーキングスペースのようなイメージでしょうか?

小山:たしかに、コワーキングスペースと似たような点はいくつかありますね。今回のリノベーションでは、共有スペースに日中のコワーキング的要素を盛り込む狙いもあるのですが、他にもいくつか提案したいと思っていることがあります。だから、リノベーションプロジェクトを①Grundrenovierung(基礎的なリノベーション)・②Möbelbau(家具作り)・③Optionelle Renovierung(オプションのリノベーション)という3つのフェーズに分けています。

【次ページ>> リノベーションのフェーズを徹底解説!】


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